「家事代行を仕事にしたいけれど、資格は必要?」「2027年から国家資格ができると聞いたけれど、今から始めても大丈夫?」
家事代行の開業を考えている方にとって、資格の話は気になるところです。
結論から言うと、現在、一般的な家事代行を始めるための必須資格はありません。 一方で、政府は新しい国家資格(技能検定)の創設を進めています。ただし、2027年から無資格で働けなくなると決まったわけではありません。
この記事では、今の制度と新資格の準備状況、既存の「家政士」との違い、個人で始める人が今できることを、公式資料をもとに整理します。
情報の基準日:2026年11月7日。国家資格は準備段階にあり、内容や予定が今後変わる可能性があります。
まず確認:決まっていること、まだ決まっていないこと
| 気になること | 2026年11月7日時点の状況 |
|---|---|
| 今、家事代行の開業に資格は必要? | 一般的な家事代行には必須資格なし。保育・介護など別の業務には注意が必要 |
| 新しい国家資格はできる? | 創設に向けた政府方針が決定。制度の詳細は準備中 |
| 試験はいつ? | 2027年秋が政府の目標。正式な試験日は未発表 |
| 無資格者は働けなくなる? | そのような決定は確認されていない。予定される技能検定は、技能を証明する名称独占の仕組み |
| 受験資格・費用・科目は? | 未公表 |
| 講習や税制優遇は? | 講習の準備方針・税制措置の検討はあるが、対象や条件などの詳細は未確定 |
知りたい疑問から読む
- Q1. 資格がなくても家事代行を始められる?
- Q2. 2027年の国家資格とは何?いつ始まるの?
- Q3. 受験資格や費用は決まった?
- Q4. 家政士とは何が違うの?
- Q5. 国家資格を取得すると有利になる?
- Q6. 今から何を準備すればいい?
第1部 現在の制度:家事代行に資格は必要なのか
一般的な家事代行に、必須の資格はありません
掃除、洗濯、調理、買い物、整理整頓といった一般的な家事代行については、根拠となる法律に基づく必須資格や営業許可がありません。厚生労働省の職業情報サイト「job tag」でも、家政婦(夫)の仕事について「特に学歴や資格は必要とされない」と説明されています。中小企業基盤整備機構の開業ガイド「J-Net21」にも「家事代行サービスを提供するにあたって必須の資格などはない」と明記されています。
個人で始める場合には、資格とは別に税務の手続きなどを確認しましょう。所轄の税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)の提出が中心になります。提出期限については、国税庁の現在の案内で「開業した年分の所得税の確定申告期限まで」とされています(古い情報源では「開業から1か月以内」と書かれていることがあります。最新の国税庁の案内で確認してください)。
なお、「必須の資格がない」のは「何をしてもよい」という意味ではありません。お客様との契約、料金の受け取り、万一の物損への備えなど、仕事として引き受ける以上は一般的なルールが適用されます。資格の有無とは別の話として、サービス内容と条件を先に決めておくことが実務上の備えになります(第4部で触れます)。
ただし、仕事の内容によっては別の制度の対象になります
家事代行そのものは無資格で始められますが、仕事の形態や内容が変わると、別の法律の許可や届出が必要になる場合があります。開業前に、自分のサービスがどれに当たるかを確認してください。
| 形態・内容 | 必要なこと | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般的な家事代行(自分で請け負って提供) | 一般的な家事代行に固有の資格・営業許可は不要。税務・契約等の確認は必要 | ― |
| 家政婦(夫)の紹介事業を始める | 有料職業紹介事業の許可(厚生労働大臣) | 職業安定法 |
| スタッフを雇用して派遣する | 労働者派遣事業の許可 | 労働者派遣法 |
| ベビーシッターなど、子どもの預かり(認可外の居宅訪問型保育) | 都道府県知事等への届出(事業開始から1か月以内) | 児童福祉法 |
| 介護保険の訪問介護(身体介護・生活援助) | 都道府県等の指定と、人員基準を満たすこと(介護福祉士、介護職員初任者研修の修了者など) | 介護保険法 |
特に注意したいのは子どもの預かりです。「家事のついでに子どもを見ていてほしい」という依頼は現場では起こり得ますが、乳幼児を預かる事業は届出の対象になり得ます。また、介護保険を使わない身体介助(入浴や排せつの介助など)については、公的な線引きが明確でない部分があり、事故のリスクも大きいため、安易に引き受けない判断も含めて、サービス範囲を先に決めておくことが大切です。
第2部 2027年の国家資格とは何か・いつ始まるのか
作られようとしているのは「技能検定」の新しい職種です
まず言葉の説明をします。技能検定とは、働く人の技能の程度を国が検定して公に認める国家検定制度で、職業能力開発促進法という法律に基づいています。2026年3月時点で133の職種があり、学科試験と実技試験で評価され、合格すると「技能士」と名乗ることができます。ここに、家事支援サービスの職種を新しく加えることが進められています。
2026年7月21日に閣議決定された『日本成長戦略』では、家事支援サービスについて「複数等級の国家資格(技能検定)の創設に向け、職務分析の実施、検定試験の作成、試行試験の実施等の準備を進め、関連審議会における議論を行った上で、2027年秋を目途に第1回の国家資格試験実施を目指す」とされました。閣議決定とは、内閣としての方針を正式に決めることです。つまり「国家資格を作る」という政府の方針は決まりましたが、家事支援サービスの職種としての技能検定は、まだ始まっていません。
現在の進み具合は、厚生労働省の説明では「検定構築フェーズ」です。仕事の内容を分析して、検定の基準と試験問題(学科・実技)を作っている段階で、このあと試行試験、専門の調査員会での検討、労働政策審議会(人材開発分科会)への諮問を経て、関係する省令が改正され、試験の実施機関が決まる、という順序が示されています。省令への諮問は、2026年11月4日に開かれた第61回の分科会でもまだ行われていません。
「名称独占」と「業務独占」の違いがいちばん大事です
資格には、大きく分けて2つのタイプがあります。
- 名称独占:合格した人だけが、その資格の名前(称号)を名乗れる。資格がなくても、その仕事自体はできる
- 業務独占:資格を持った人でなければ、その仕事をしてはいけない
技能検定は名称独占の制度です。職業能力開発促進法第50条は、技能検定の合格者は「技能士」と称することができ、技能士でない者は「技能士」という名称を用いてはならない、と定めています。一方で、家事代行の仕事自体を有資格者に限るという定めは、この法律にはありません。
したがって、現時点で言えるのは次の範囲です。新資格は、合格者だけが「技能士」と名乗れる技能検定として準備されていること。そして、無資格者の家事代行を禁止することは、政府の資料のどこにも決定事項として示されていないこと。将来の制度変更まで予測して断定はできませんが、「2027年から資格がないと家事代行ができなくなる」という話には、現時点では根拠がありません。
受験資格・科目・費用・日程は、まだ公表されていません
2026年11月7日時点で公表されているのは、「複数等級であること」までです。次の項目はすべて未公表です。
- 資格の正式名称(公的資料の表記は「家事支援サービスに係る複数等級の国家資格(技能検定)」です。「家事支援技能士」などの名前は公式の名称ではありません)
- 等級の数と、それぞれの水準
- 受験資格(実務経験が必要か、誰でも受けられるか)
- 試験科目・合格基準
- 受験費用
- 試験の具体的な日程・申込期間
- 試験を実施する機関
厚生労働省は審議会で、受験資格やスケジュールについて「できるだけ早くお示しできるように作業していきたい」と回答しています(2026年9月)。正式な発表時期は確定していませんので、厚生労働省の公表を確認しましょう。
2027年春の「講習」は、政府が開く講習ではありません
「2027年春から講習が始まる」という話も出ています。これは、国家資格の取得を支援するために、民間事業者による講習プログラムの開発を政府が促進し、2027年春を目途に受講が開始できるようにする、という内容です。実施する事業者、カリキュラム、費用はまだ公表されていません。また、講習を受けることが国家資格の受験条件になる、という公表もありません。講習の受講料の支援については、既存の制度(事業者が従業員を訓練する場合の助成金や、教育訓練給付金)の活用が検討材料として示されている段階です。
第3部 家政士など、今ある資格との違い
家政士は国家資格ではありません
「家政士」は、公益社団法人日本看護家政紹介事業協会が実施する検定の合格者の称号です。国家資格ではなく、職業能力開発促進法に基づく団体等検定という制度で、2025年3月に厚生労働大臣の認定を受けました(認定番号 団第1号、対象職種は「家政サービス」)。団体等検定とは、民間団体が行う検定のうち、一定の基準に合うものを国が認定する仕組みです。
家政士の特徴は次のとおりです。
- 等級は単一(新しい国家資格のように複数等級ではありません)
- 評価の範囲は、衣・食・住の家事支援を中心に、介護や子育て支援など生活全体のサポートです(これは家政士の範囲であり、新しい国家資格の試験範囲として決まったものではありません)
- 受験資格はいくつかの区分に分かれます。家政婦(夫)や介護の実務経験を一定年数積んだ人のほか、家事・育児・介護などの日常経験や家政分野の学習歴を含め、同等の経験・能力があると認められる人も対象となり得ます。ただし、家庭での経験があれば自動的に受験できるわけではありません。必要な証明書類や認定条件は協会の公式案内で確認してください
- 区分によっては、合格しても協会の特別会員にならなければ「家政士」と称することができない場合があります
- 直近の試験は2026年11月21日実施で、受験手数料は一般13,000円でした(2026年度の申込受付は終了しています。次の実施日程は協会の公式案内で確認してください)
また、家政士がそのまま新しい国家資格に切り替わる(格上げされる)、家政士の合格者に新資格の受験免除がある、といった決定は確認できていません。政府は当面の対応として、家政士を含む既存の検定制度の周知を進め、受験者を増やす方針を示しています。
資格・認証の種類を整理すると
| 区分 | 誰が実施・認定するか | 法的な性格 | 家事分野での例 |
|---|---|---|---|
| 国家資格(技能検定) | 厚生労働大臣が検定し公証 | 法律に基づく国家検定。合格者は「技能士」と名乗れる(名称独占) | 家事支援の職種は創設準備中(まだ存在しない) |
| 団体等検定 | 民間団体が実施し、厚生労働大臣が認定 | 国家資格ではないが、国が検定の枠組みを認定 | 家政士 |
| 民間資格 | 協会・企業が独自に実施 | 法的な裏付けはない。水準は団体による | 家事代行アドバイザー、整理収納アドバイザーなど |
| 事業者向け認証 | 業界団体が運営する第三者認証 | 資格ではなく、事業者の品質の認証 | 家事代行サービス認証(対象は実績12か月以上の法人で、個人は対象外) |
個人で始める人が関わるのは、主に上の3つです。事業者向け認証は法人向けの仕組みなので、開業前の個人が取得を目指すものではありません。
国家資格を取得すると有利になる?
結論から言うと、有利になるかどうかは、まだ決まっていないことに左右されるため、今の時点では判断できません。
関係しそうな動きとして、利用者への税制優遇の検討があります。政府の成長戦略では「今後創設する新たな国家資格保有者等による家事支援サービス」の利用促進に向けて、税制措置を含む支援策を検討するとされています。2027年度の税制改正要望にも、家事支援サービス等の利用費用についての税制上の措置が、関係3省庁の共同要望として盛り込まれました。
もし将来、税制優遇の対象が「資格を持つ人のサービス」に限られる形で実現すれば、資格の有無がお客様の選び方に影響する可能性はあります。ただし、対象の範囲(「等」に無資格者や他の検定の合格者が含まれるか)、控除の方式・金額はすべて未決定です。また、資格を取ることで収入が上がるという公的なデータもありません。要望の段階の話と、決まった制度の話は分けて受け止めてください。判断材料がそろうのは、受験資格・費用と、税制の対象範囲が公表されてからです。
第4部 個人で始めたい人が、今からできる準備
国家資格の詳細が公表されるのを待つ間にも、開業の準備は進められます。今できることを順に挙げます。
1. 開業の手続きは、資格を待たずに進められます
現在の制度では、一般的な家事代行を始めるための必須資格はありません。個人で事業を始める場合は開業届などの税務手続きも確認しましょう。サービス内容によって必要な届出や許可が変わる場合は、事前に確認してください。
2. 提供するサービスの範囲を決めておく
第1部で見たとおり、子どもの預かりや介護に近い内容は、別の制度や届出の対象になったり、線引きが難しかったりします。「掃除・洗濯・調理・買い物は行う」「子どもの預かりは行わない」など、自分のサービス範囲を先に決めておくことが、トラブルを避ける実務的な準備になります。
3. 料金と収支の設計を固めておく
資格の有無にかかわらず、開業で先に必要になるのは料金設計です。目標金額から必要な件数を逆算し、移動時間を含めた実質時給で検証する考え方は、公開中の記事「家事代行で独立したら、月10万円に届く?」で整理しています。数字を入れて試算するには、家事代行の料金・収益シミュレーターが使えます(入力した数値はブラウザの中でのみ計算され、外部に送信されません)。
4. 家政士に関心がある人は、まず受験資格を確認する
家政士は国が認定する団体等検定です。受験資格には、職場での実務経験だけでなく、家事・育児・介護などの経験を含めて同等の能力が認められる区分もあります。「仕事として5年働いていないから受験できない」と自己判断せず、協会の公式案内で自分が該当する区分と必要書類を確認してください。
5. 新しい国家資格の情報は、公式の公表で追う
受験資格・費用・日程がいつ公表されるかは、まだ確定していません。確認先は厚生労働省の分科会ページと技能検定制度のページです(出典にURLを記載)。新資格の試験科目や受験条件をうたう講座・教材を見る場合は、公式に公表された情報に基づいているかを確かめてから申し込みましょう。
補足:政府が家事支援を進める背景と、税制・市場の現在地
ここからは補足です。政府が家事支援サービスの利用促進を進める目的は、子育てや介護による離職を防ぎ、働く人を確保することとされています。政府は、家事の負担軽減を通じて、育児や介護による離職を防ぎ、仕事と家庭の両立を支援することを政策の背景に挙げています。また、サービスの品質と信頼性を高め、利用しやすくすることを目指しています。
ただし、政府が普及を進めていることと、個人で開業すれば依頼や収入が増えることは別です。開業を考える際は、地域での需要や競合、移動時間、採算を自分の条件で確かめる必要があります。
税制優遇については、2027年度の税制改正要望に盛り込まれた段階で、内容は決まっていません。過去にも同様の要望が実現しなかった経緯があります。また、個人が直接申請できる全国一律の「家事代行補助金」は、公的資料では確認できません(自治体が独自に行う産前産後支援などの助成とは別の話です)。
まとめ
- 今の制度では、家事代行を始めるのに資格は必要ありません。開業届などの税務手続き、サービス範囲・契約条件の確認が必要です
- 2027年秋の第1回試験実施を「目指す」国家資格(技能検定)の創設準備が進んでいますが、名称・受験資格・科目・費用・日程は未公表です
- 予定されている検定は名称独占の制度で、無資格者の業務を禁止することは決定されていません
- 家政士は国家資格ではなく団体等検定で、受験には実務経験などの要件があります
- 開業の準備(手続き・サービス範囲・料金設計)は、資格の公表を待たずに進められます
制度の変更があり得るため、最新の状況は厚生労働省等の公式情報もご確認ください。
出典(いずれも2026年11月7日に確認)
- 日本成長戦略(2026年7月21日閣議決定)厚生労働省抜粋
- 第59回労働政策審議会人材開発分科会議事録(2026年9月7日)
- 第61回労働政策審議会人材開発分科会 配付資料(2026年11月4日)
- 第9回日本成長戦略会議 資料2「日本成長戦略実行計画に盛り込む主な事項(案)」(2026年11月6日)
- 厚生労働省 技能検定制度について
- 職業能力開発促進法(第50条 技能士の名称)
- 厚生労働省 団体等検定事例(家政士)
- 日本看護家政紹介事業協会 家政士検定試験受験案内
- 厚生労働省 job tag「家政婦(夫)」
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21「家事代行」
- 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 家事代行サービス認証:申請要件
- こども家庭庁「認可外の居宅訪問型保育事業者のためのガイドライン」(2026年4月資料)
- 財務省 令和9年度税制改正要望(こども家庭庁)